経歴詐称の従業員を解雇したい!金沢の弁護士が詳しく解説

1 はじめに

会社が新たに人員を採用する際,履歴書を提出させ,応募してきた人の経歴を確認します。

ところが,履歴書に実際と異なる経歴が書かれていたり,当然に書かれなければならない経歴が書かれていなかったりしていたことが,採用後に発覚する場合があります。

このような経歴詐称は,提示された経歴を前提として採用し,待遇などを決定した会社に大きな不利益を与えるものであり,会社と従業員との信頼関係を大きく損ねるものでもあります。

このようなことから,会社が経歴詐称した従業員を解雇したいと考えるのも,もっともと思われることが多いです。

経歴詐称の従業員の解雇について,解説していきます。

2 前提

経歴詐称の従業員を解雇しようとする場合,多くの事案では,懲戒解雇が問題になると思われます。

したがって,以下では,経歴詐称の従業員を懲戒解雇するという場面を念頭において,解説を進めます。

懲戒解雇とは,懲戒処分としての解雇のことです。

懲戒処分とは,従業員が企業秩序を乱す行為をした場合に,会社が従業員に対して制裁の趣旨で課す処分のことです。

懲戒処分には,戒告,けん責(始末書を書かせる),減給,出勤停止,降格,解雇などの種類があり,懲戒解雇は,懲戒処分の中で最も重い処分です。

懲戒解雇は,①従業員が企業秩序違反行為を行ったこと,②就業規則において①の企業秩序違反行為が懲戒事由として規定されていること,③解雇がやむを得ないと言えるほど秩序違反の程度が著しいこと,といった要件が揃っている場合に,有効となります。

経歴詐称を理由とする懲戒解雇が有効と言えるためには,前提として,詐称された経歴が重要なものであることが必要です。

重要な経歴とは,その経歴詐称が事前に発覚すれば,使用者が雇用契約を締結しなかったか,少なくとも同一条件では契約を締結しなかったであろうと認められ,客観的に見てもそのように認められるもの,というように考えられています。

3 問題となることが多い経歴詐称

ここからは,問題となることが多い経歴詐称を取り上げて,どのような場合に経歴詐称を理由とする懲戒解雇が可能なのか,見ていきます。

① 職歴の詐称

その会社が行っている業務について,経験がないにも関わらず,同種の業務に就いた経歴があると偽り,採用された場合,同種業務の経験があるからこそ採用した,またはその条件で採用したというのが通常と思われますので,重要な経歴の詐称であり,懲戒解雇も有効とされる場合が多いと思います。

一方,例えば,募集要項に「未経験者歓迎」と記載していた場合,通常,「未経験者でも採用します」という意味と解釈されますので,「未経験者歓迎」と謳った募集に対し,履歴書に経験者であることを書かずに提出し,採用されたとしても,重要な経歴詐称とは言えず,懲戒解雇は無効と判断される可能性が高いです。

② 学歴の詐称

学歴詐称を理由に懲戒解雇しようとする場合,前提として,採用募集の際に,一定の学歴の人を募集していること(例えば,大卒以上の人,高卒までの学歴の人,など)が必要です。

一定の学歴の人を募集していることを明示していた上で,その募集されていた学歴が無いにも関わらず,あると偽って採用された場合,重要な経歴詐称に当たり,懲戒解雇は有効とされる場合が多いと思われます。

反対に,「学歴不問」と明示して採用募集していた場合は,履歴書に記載した学歴に偽りがあったとしても,重要な経歴詐称には当たらず,懲戒解雇はできないとされることが多くなると思います。

また,一定の学歴の人を募集していることを明示していたつもりでも,客観的には一定の学歴の人を募集していることが明示されていたとは言えないと判断され,懲戒解雇が無効とされる可能性がありますので,やはり注意が必要です。

③ 犯罪歴の詐称

犯罪歴の詐称については,申告すべき犯罪歴が申告されなかった(犯罪歴を秘匿した状態で採用された)という形で問題になることが多いです。

履歴書には「賞罰」欄があるのが通常ですので,「賞罰」欄に記載されるべき犯罪歴を記載せずに求人募集に応募した場合には,基本的には犯罪歴の詐称と言って良いものと考えられます。

まず,「犯罪歴」は,原則として前科である必要があり,かつ,ある程度重い刑罰を受けたものでなければ,その経歴詐称を理由とする懲戒解雇はできないと考えられます。

したがって,警察に逮捕されたが刑事裁判にはならかったという場合や,罰金刑で終わった(禁錮刑や懲役刑を受けなかった)という場合には,それらの経歴を隠していたとしても,懲戒解雇はできません。

また,採用時には裁判手続き中で判決が確定していなかったという場合も,犯罪歴の詐称には当たりません(なお,採用後に有罪判決が確定した場合,就業規則に,有罪判決が確定した場合に会社に申告する義務があることが規定されていれば,有罪判決確定の事実を申告しなかったことが,懲戒処分事由に該当することがあり得ます)。

有罪判決を受け,それが確定しているにも関わらず,その有罪判決を受けたことを隠していた場合,重要な経歴詐称として,懲戒解雇が有効とされる場合が多いと思われます。

これは,たとえ執行猶予付きの判決であっても同様です。

もっとも,禁錮以上の刑の執行を終了した人が罰金刑以上の刑罰を受けることなく10年間経過した場合,刑が消滅するところ(刑法34条の2・第1項),この刑法の規定によって消滅した犯罪歴を採用時に申告しなかったとしても,懲戒解雇は無効と判断される可能性が高いです。

なお,提出された履歴書に「賞罰」欄がなく,採用面接時にも賞罰の有無について確認しなかった場合,本来あれば申告すべき重要な前科を秘匿していても,懲戒解雇が認められない可能性もありますので,履歴書に賞罰欄があるかどうかを確認するとともに,仮に賞罰欄のない履歴書が提出された場合には,面接時に賞罰の有無を確認する必要があります。

4 おわりに

経歴詐称の従業員の解雇(懲戒解雇)について解説してきました。

最初に述べたとおり,経歴の詐称は,申告された経歴を前提として採用し,待遇などを決めた会社に大きな不利益を与えるものであり,会社と従業員の信頼関係を損なう行為です。

経歴詐称があった場合,会社としては従業員を解雇したいと考える場合が多いでしょうが,経歴詐称があればどのような場合でも従業員を解雇できるというわけではありません。

経歴を詐称した従業員を適切に解雇するためには,就業規則などの規定を整備しておくことはもとより,募集の際に募集条件を明確に示すなどの対策も必要です。

経歴詐称の従業員の解雇については,法的観点を踏まえた対応が不可欠ですので,ぜひ,弁護士にご相談下さい。

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