働かない職務怠慢な社員を解雇したい!問題社員対応のポイント

働かない、職務怠慢とはどういうことか

労働者の中には、真面目で勤勉な人もいれば、一方で、職務を怠っていると言わざるを得ない人もいると思います。

労働者が、遅刻、無断早退、無断欠勤、職場からの離脱を繰り返すことは、分かりやすい職務怠慢です。

また、勤務中に、隠れて私用のメールやSNSをしたり、私的な電話をかけたりすること、会社が貸与したパソコンで私的なウエブサイトを閲覧することも、職務怠慢と言ってよいでしょう。

これに対して、どんな仕事を依頼しても、忙しいと言って断ったり、すぐにできる量の簡単な仕事なのに時間がかかり過ぎたり、勤務時間中にパソコンの前でぼーっとしているかのように見えるといったように、職務怠慢なのかどうか分かりにくいケースもあります。

働かない職務怠慢な問題社員に対応しないことの不利益

さて、問題は、職務怠慢な労働者を放置しておいてよいかという事です。

使用者は労働者に給与を支払っていますので、労働者が職務に専念しないということは、使用者は、労働者が職務を怠っている時間に応じた給料を無駄にしているということになります。

しかしながら、問題はそれに限られません。

職務怠慢な労働者を放置すると、その労働者の周囲の労働者が、「私は頑張っているのにあの人は・・・。」、「同じ給料なのに不公平ではないか。」といった不満を抱く可能性があります。そうすると、労働者間の不和を生じさせ、職場環境の悪化を招きかねません。

そもそも、職務怠慢を続けていれば、仕事を通じて労働者自身が成長する機会を自ら放棄していることになりますので、労働者自身にとっても良くないことだと言えます。

職務怠慢な労働者に対処する際のポイント

そこで、使用者は、労働者の職務怠慢に対処する必要がありますが、まずは、労働者が職務を怠っているかどうかを見極める必要性があります。

例えば、勤務時間中の私的な電話であっても、子どもが急に熱を出した等、電話に出て対応しなければならないことがあります。私的な電話に出ることを、全て職務怠慢だと言う事はできないでしょう。

また、頼んだ仕事を断られたとしても、本当に忙しいだけかもしれませんし、仕事が遅いといっても、労働者は頑張っているが慣れないことで手間取っているだけかもしれません。遅刻や早退を繰り返すことについても、体調に問題があったり、家族の悩みを抱えてたりしているのかもしれません。

そのため、労働者が職務を怠慢しているように見えることが、本当に職務怠慢と言えるのかどうかを見極めるとともに、労働者がそのようにしている原因も追究する必要があります。

例えば、職場に対する不満、待遇に対する不満、職場環境が悪い、労働者が職場環境に適応できていない等、使用者側の問題や使用者側で対処できる事情であれば、使用者が適切に対処することによって、労働者の職務怠慢の原因を取り除き、職務に専念にしてもらう必要があります。

また、労働者の健康や家族の問題などがあれば、使用者にも、何らかの配慮が必要でしょう。

これに対して、職務怠慢の主たる原因が、労働者のやる気のなさや性格に起因するものであれば、労働者を指導し、改善を求めなければなりません。ただし、労働者がやる気を出さなかったり、仕事中に私用をしたりすることについては、労働者には労働者なりの理由がありますので、面談等を行い、労働者の考えをよく聞く必要があります。そのうえで、労働者が間違った考えを持っている場合には、丁寧に説明して、考え方や行動を改めてもらう必要があります。この場合、単に正論を言うだけでは、労働者が変わることは容易ではありません。簡単なことではありませんが、労働者が自ら積極的に改善したくなるようにはどうすればよいかを考え、工夫や努力を続けることが大切です。

職務怠慢な労働者に対する注意指導等によって効果が見られれば、それで職場内の問題が解消したと言えます。また、仮に、労働者に何度指導しても改善が見られないとしても、指導を継続していたことが、後々の解雇等、労働者に対する処分の合理性を裏付ける事情となりますので、指導を続け、改善の機会を与えることそれ自体に意味があります。

そのため、労働者との面談や労働者に対する改善指導や説明等については、後日の紛争に備えるためにも、しっかりと記録化しておくことが重要です。

働かない職務怠慢な労働者は解雇できるかについての裁判例

このように、職務怠慢な労働者に対しては、継続的に注意指導して、改善を求めることが重要ですが、そうは言っても、改善が見られないからと言ってすぐに解雇することは、裁判で争われるため、慎重になるべきです。

職務怠慢な労働者に対する懲戒処分の効力が争われた裁判例を確認してみましょう。

福岡高判平成17年9月14日は、勤務先から貸与された業務用パソコンを使って、出会い系サイトに登録し、勤務中に大量の私用メールのやりとりを行ったことを理由とする懲戒解雇を有効としています。

一方で、東京地判平成15年9月22日は、就業規則等で特段の定めがない限り、社会通念上相当と認められる限度で、使用者のパソコン等を利用して、1日2通程度の就業時間中の私用メールを送受信しても、職務専念義務に違反するものではないとしています。

働かない職務怠慢な問題社員対応は弁護士にご相談下さい!

これらの裁判例を見るまでもなく、どのようなことがあれば職務専念義務に違反して、職務怠慢となるのかについては、慎重に検討しなければなりません。

職務怠慢の程度が明らかに酷く、誰がどう見ても改善の可能性がない場合には、解雇をすることのリスクは少ないと言えますが、現実的には、解雇が有効となるか無効となるか予測が困難なケースも多いと思います。

そのような場合には、労働者と話し合って、自主退職してもらうということも考えられます。

労働者にとっても、一度解雇されたとなると問題社員のレッテルを貼られることになりかねませんし、違う職場環境や職種では、能力を活かして活躍できるかもしれませんので、自発的に退職し、他社で働いてもらうことが望ましい解決になることもあります。

最後になりますが、労働者の職務怠慢のために職場環境が悪化して困っているという使用者の方は、適切に対処する必要がありますので、弁護士への相談ください。

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